今回も、呉観光協会発行の
「まちあるきガイドブック すずさんが暮らした呉」より
今回は「コース1 すずさんと周作さんが歩いた道」を歩きます。
まちあるきガイドでは便宜上、呉駅からスタートしますが、今回は原作とアニメの行程を参考に進めていきます。
※一部まちあるきガイドのコースからは少し外れます。
ある日、北條家で家事をしているすずさんのもとに、電話で帳面を軍法会議まで持ってくるようにと知らせが入ります。
眼鏡橋高架橋
アニメでは、帳面をもったすずさんが高架橋をくぐって海軍の敷地内に入って行きます。
今では至極当たり前のように鉄道の高架橋を見ることができますが、当時としては鉄道の高架橋はめずらしいものだったようです。
昭和10年に、呉〜広までの鉄道が開通しますが、海軍へと通づるメインの道が、鉄道が横切るために交通が滞るのはよろしくないと、当時としては珍しくあえて高架橋にしたようです。
「この高架橋をくぐると海軍の敷地内」そんな感じがした高架橋だったのかもしれません。
ちなみに「眼鏡橋」とは、鉄道ができるよりも以前にあった海軍へと通じる石橋のことで、今は地中に埋まっているそうです。
旧下士官集会所(青山クラブ)
当時から現存する貴重な建物で、最近まで海上自衛隊が所有していました。
当時は主に、上陸した下士官や水兵が過ごした施設で、中には購買部をはじめ宿泊施設もありました。
一時、解体して駐車場にする案がありましたが、現在所有している呉市は「この世界の片隅に」の映画のヒットもあってか、保存していく意向を表明しています。
左側が旧下士官集会所、右側の緑の多い公園は練兵場跡。
アニメ版では、軍法会議を退勤した周作さんがこの坂道をくだって来て、下士官集会場所の前で待っているすずさんと出会います(原作では、すずさんが軍法会議の門の前まで行く)。
旧鎮守府司令長官官舎〜軍法会議跡
この坂道をあがっていくと左手に・・・
作中には出てきませんが旧鎮守府司令長官官舎の入船山記念館があります。
入船山記念館のすぐ横にある交差点のつきあたりに、旧海軍病院、現在の国立呉病院(呉医療センター)があります。
ちなみにこの階段は、後に、すずさんと晴美さんがのぼった階段。
病院の前の道をすすんでいきます。
病院脇に呉看護学校へと上がって行く坂道があり、道の反対側に、現在海上自衛隊の宿舎があります。
この海自の宿舎が呉鎮守府軍法会議跡のようです。
「すずさんと周作さんが歩いた道」なのに、「すずさんが軍法会議へと行く道」で1記事できそうですが、続けますw
すずさんと周作さんが歩いた呉の繁華街
アニメには小松屋、地球館、喜楽館 といった建物が映し出されていました。どれも実際に呉にあった建物です。現在の中通り「れんがどおり」にあったようです。
小松屋は明治23年創業の洋品店。戦前は洋服よりも肌衣や寝具を中心に海軍に行商していたそうです。現在でもクレアルというショッピングモールの3階で営業されています。
地球館と喜楽館は映画館。水兵さんがたくさん陸にあがっていたので「ここは譲らんとの〜」と周作さんが言って2人は映画を見ることを諦めます。
地球館も喜楽館も廃業されていて建物もありません。
小春橋と堺橋
すずさんと周作さんが、橋の上で立ち止まって欄干に手をかけて語り合うシーンがあります。その橋が小春橋。
上の写真に写っている橋が小春橋で、奥に写っている山が灰ヶ峰です。北條家は灰ヶ峰の麓の方にあるという設定です。
現在の小春橋は、当時のものではありません。
なんの変哲も無いただの橋です。
小春橋より、1つ下流の方にある橋は、堺橋。
こちらは原作でも後方に描かれています。
堺橋は、往時の姿を残す貴重な橋で、以前は路面電車、市電も走っていました。ちなみに呉の市電は、広島の市電よりも3年ほど古く明治42年に開業していますが、昭和42年に廃止となりました。
普通、堺橋のように現存するいかにも絵になりそうな方を描きそうな感じがしますが、あえて現存しない小春橋を登場させたのは、この作品の奥深いところ。
2人が語り合う重要なシーンが、堺橋ではなく、あえて小春橋にしたのはなぜだろうと思いつつ散歩するのも楽しいものです。