花粉と花粉症の科学 Science of pollen and pollinosis
上野の国立科学博物館の企画展 「花粉と花粉症の科学」を見て来ました。
このシーズンになると花粉症でずっと悩まされてきましたが、花粉について実際はよく知りませんでした。
花粉シーズン前ににちょうど良い機会だったので、花粉について学ばせてもらった事を備忘録として簡単に記します。
花粉の媒介
花粉は、それ自体では動けないので、風、動物、水などに頼って運んでもらう必要があります。
- 花粉を虫に運んでもらうもの→虫媒花
- 花粉を鳥に運んでもらうもの→鳥媒花
- 花粉をコウモリに運んでもらうもの→コウモリ媒花
- 花粉を水に運んでもらうもの→水媒花
- 花粉を風に運んでもらうもの→風媒花
この風媒花が、花粉症のほとんどの原因。
栄養源としての花粉
なぜ急に給食の展示?と思ったら
じつは、花粉自体は、栄養バランスが良いそうです。
動物に花粉を運んでもらう代わりに、花粉を食料として与えているそうです。
蜜もそうですが、栄養バランスのよい花粉によって、虫などの動物をおびき寄せているとか。
給食に含まれる栄養素とほとんど同じく、花粉にも栄養素がバランスよく含まれているとのこと。
食用の花粉、薬の花粉
なんと蜂蜜10gに、平均して5万粒の花粉が入っています。
蜂蜜を食べることで、知らず知らず花粉を食べていたようです。
松花冷麺は、松の花粉を利用して作っているそうで、栄養価も高いようです。
花粉は他にも、薬としても古くから使われてきました。
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神話で有名な因幡の白兎。
白兎は、ワニをだまして毛皮を剥ぎ取られてしまいます。
そこに通りかかった大国主命が、白兎をあわれに思い、ガマの花粉を敷き散らした上に転がせて傷を癒しました。
古事記に出てくるこのエピソード。日本でも古くから花粉を治療薬として使用されていたことがわかります。
このガマ花粉は生薬名を「蒲黄」というそうですが、傷薬だけでなく、長く服用すれば身を軽くし、気力を充実させ、長寿を得させるとか「本草網目」(1596)
さらに花粉の世界へと入っていきます。
花粉の姿
花粉の電子顕微鏡画像です。
こう見ると花粉も様々な形をしています。
左下の「2」がスギ花粉。
見かけにも悪そうな?、「21」がブタクサの花粉だそうです。
電子顕微鏡画像で花粉の姿、形を学んだところで・・・
花粉当てクイズです!。。。。
花粉を付けないスギとヒノキの発見
1992年には、富山市内の神社で全く花粉をつけないスギが発見されました。
2012年には、神奈川県の厚木市で正常な花粉を全く付けないヒノキを発見。
無花粉スギの発見された富山県では、20年かけて無花粉スギを品種改良し「立山森の輝き」という名の優良無花粉スギを開発。
現在、富山県で栽培されるスギ苗は、全て無花粉の「立山森の輝き」だそうです。
花粉がないスギは歓迎ですが、ただ先ほども学んだように花粉は良い点も多いはずです。
無花粉スギばかりになると生態系にどのような影響を与えることが考えられるのかも、ちょっと知りたい気もします。
花粉症対策
花粉症対策の基本は、やはり花粉をもちこないこと。
- 花粉対策コートを着用する。
- 花粉の飛散が激しい時は窓を開けず、空気洗浄機機能付き換気扇も効果的。
- 洗濯物も外には干さずに、除湿機等を使って部屋干し。
- 窓側や、玄関付近は室内に入った花粉が多い→こまめに掃除機をかける。
- 空気清浄機で空気中の花粉を取り除く。
- 湿度を60パーセント以上に保って花粉を舞い上げないようにする。
やはり、乳酸菌は花粉症の改善になるようです。
乳酸菌と聞くと、ヨーグルトと思ってしまいますが、他にも
- 漬物
- キムチ
- チーズ
- 醤油
などにも乳酸菌が多く含まれています。
近い将来、お米を食べて花粉症対策というのも
免疫細胞全体の約6割は腸に存在するそうです。
そのため、抗原を腸まで届けられれば免疫療法の効率が上げられるようです。
そんなコメの研究開発が進んでいるそうです。
花粉と聞くだけで、痒くなりそうなシーズン到来ですが、花粉にも当然良い面もたくさんあります。
普段は知ることのできない、花粉を少し知ることができた、とても良い企画展でした。
ここに記載したことは、ごく一部分です。
科学博物館の常設展の入館料だけで、この企画展を見れますので、ぜひご興味のある方は実際に行ってみるといいかもしれません。
今年も、花粉シーズン到来
彼を知り己を知らざれば百戦危うからず(でも、多分危ういかも)
企画展 花粉と花粉症の科学
2016年12月23日(金・祝)〜2017年3月20日(月・祝)
上野 国立科学博物館 日本館1階 企画展示室
開館時間:9:00〜17:00(金土曜は20:00まで)入館は30分前まで
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
入館料:一般・大学生620円 高校生以下、65歳以上は無料