夢見る旅路

江戸東京発今昔物語

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浅草鷲神社と長國寺の酉の市。吉原のおとりさま。酉の日について。2019年は8日と20日。

浅草鷲神社酉の市について

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酉の市 

此年三の酉まで有りて中一日はつぶれしかど前後の上天氣に大鳥神社の賑ひすさまじく 「たけくらべ」

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出典:現代日本文学全集 第9篇「樋口一葉照影(明治二十八年)」国立国会図書館

 下谷竜泉寺町に住んでいた樋口一葉は、名作「たけくらべ」の中で、鷲神社の酉の市の賑わいについて、こう書いている。

 一葉の住んでいた下谷竜泉寺町と、「酉の市」が開催される鷲神社はすぐ目と鼻の先。

現在、鷲神社の近くに「一葉記念館」もある。

 

もともとは、葛西花又村(現在の足立区花畑)にある鷲大明神がはじまりとされていて、農具市で売られていた熊手が、福をかき込むめでたい縁起物となって広まったと言われている。

 

吉原のおとりさま

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 江戸切絵図 今戸箕輪浅草絵図(抜粋) 尾張屋版 国立国会図書館

鷲神社(鷲明神)は、吉原のすぐ隣で「吉原のおとりさま」とも云われた。吉原も「酉の市」の日に限っては門を開放した。

 

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浅草の「酉の市」というと鷲神社が有名だが、隣接する長國寺でも開催されている。

そもそも、この2つの寺社は江戸時代までは神仏混淆で一緒に運営されていたが、明治の「神仏分離令」で分離されてしまった。別当とは僧侶が神主を兼ねる僧職のこと。

切絵図も「鷲明神」と「長國寺」が同一敷地として記されている。

 

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名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣 広重 国立国会図書館

広重の有名な名所江戸百景「浅草田甫酉の町詣」に描かれている猫は、吉原の遊郭から、酉の市(当時は酉の町と云われていた)を眺めている様子を描いている。

 

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よく見ると、熊手をもった参拝客の長蛇の列が見える。

 

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江戸自慢三十六興 酉の丁銘物くまで 広重 豊国  国立国会図書館

 

酉の市では、「熊手ミュージアム」という展示があり江戸時代の熊手を再現している。

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今の熊手ほど、豪華絢爛なわけではなかったようです。

 

酉の日

酉の市は、毎年11月の酉の日に行われる。

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年に酉年があるように、月や日、時間にも酉が12回に1回やってくる。

当然、月初めに酉の日がくれば、その月は酉の日が3日ある。

 

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今年、平成29年(2017年)の11月は、最初の酉の日が11月6日に来たので、11月に酉の日が3日あり、酉の市が3回開催される。

 

最初の酉の市を「一の酉」、2回目を「二の酉」、3回目を「三の酉」と呼び、「三の酉」まである年は、火事が多いとか。

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「三の酉」の年にあたる年は、災難を払う「火除護り」が授与される。

 

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もう1つ、12年に1度の酉年だけに「勝幟守(しょうしまもり)」が授与される。

各市2,000体、合計6000体の限定で、時間を分けて番号札と整理券が配れるほどの大盛況。

 

ちなみに2016年の統計データによると、過去10年で一番火災が多かった年は2007年(「二の酉」まで)の5万4852件だったが、火災で最も多く死者数を出した2006年は「三の酉」まである年だった。

 

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「なんの酉」の年であれ、ちょうど乾燥しやすい季節に入る頃、火の元と風邪、インフルエザンには気をつけたいですね。

 

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