松方弘樹さんが亡くなった。74歳だったそうだ。
松方弘樹といえば、僕ら世代(1980年代生まれ)には、マグロの一本釣りや、ビートたけしの「元気が出るテレビ」にいつも出ていたとか、それくらいのイメージしかないかもしれないけど、時代劇好きの自分にとっては、松方弘樹といえば遠山の金さんだった。
松方弘樹のドスの効いた遠山の金さんが大好きで、録画して何度も何度も見た。
今でも、松方弘樹扮する、遠山金四郎の決めのセリフを、いくつも言える。
「おめーらの行く着く先は、三尺たけぇ獄門台よ!」
「やかましいな悪党!おめーらの恋しい金さんよ〜、はじっめからこの白州に座っているんだよ!」
「散る桜、残る桜も、散る桜・・・」
「おーこっぱ!あの晩、浜町町の船宿で見事に咲いた お目付桜 夜桜を、まさかおめーら、見忘れたとは言わせねぇぞ!」
という具合に。
普段は町人の身分で、遊び人に扮する金さんが松方弘樹というのは、どことなく似合っているような気がしていた。
そして、遠山の金さんのエンディングのテーマソングがよかった。
兄弟みたいに生まれた時からおんなじ町でホ〜ホケキョ。
口は悪いが器量はそこそこ、なんでも言えよ・・・♪
夢を追いかけ、木の葉のように、川を流れて海に出ろ〜〜♪
桜花びら、散る前に、咲いているうちに〜♪
「華のうちに」 作詞作曲:吉幾三
小学校の頃、この歌をうたいながら、木の棒をふりまわして帰っていた記憶がある。
その頃、カラオケに行って初めてこの歌を歌おうとおもったら、出だしが違う。
遠山の金さんのエンディングで流れていたのは、どうやら2番の歌詞だったようだ。
1番の歌詞では、金さんのイメージにあまりあわないようだから、テレビ曲で編集したんだろうなーと、小学生でありながら生意気に思っていた。
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もうひとつ、松方弘樹で思い出すのは、二十歳過ぎて見た「人間魚雷 あゝ回天特別攻撃隊」という映画があった。
その映画に出てくる三島少尉は、若き日の松方弘樹。
海軍内でも反対にあいながら、人間魚雷回天を発案した上官の大里大尉を補佐する。
そして大里大尉を回天の事故で失う。
ラストシーンは、三島が敵艦隊に回天で突っ込んで終わる。
当時の自分には、後味の悪さだけが残った映画だった。
その後、しばらくして山口の大津島の回天基地に行く前にも、この映画を見返した。
遠山の金さんも、回天の三島少尉も、松方弘樹の名演技で、自分の中に今でも余韻が残っている。
個人的なことだけど、理不尽な理由で会社を辞することになり、会社最後の日の帰り道、満開になりかけの桜を見つつ
「散る桜、残る桜も散る桜・・・」
と、遠山の金さんを見て覚えた名句を、松方弘樹の遠山景元風につぶやき、そして泣いて帰った。
(この句は、良寛禅師の句といわれているが、良寛禅師も一説によると宗門から追放されている。)
ドラマの遠山の金さんは、終盤のお白州のシーンの前に、悪党相手に暴れまくる。
そしていつもお決まりで町方が「御用だ!御用だ!」と踏みこんでくる。
それに気づいて、金さんは「あばよ!」と言って一目散に去っていく。
訃報を聞いた時、まさにそんな感じで僕の中からは松方弘樹が去っていった気がする。
松方弘樹の私生活は、よく知らないけど、いろいろとあったみたい。
でも役者としては好きでした。
ご冥福をお祈り申し上げます。