今回は、すずさんのお嫁入りの道中をたどります。
漫画、アニメでもサラッと流れるこの場面ですが、交通関連ネタは意外と現代でも残っているところが多くあり興味深かったのと、2018年7月の豪雨で呉線と呉は大きな被害を受けたので、応援の意味もこめて少し綴っていきます。
江波から舟入本町の電停へ
すずさんの実家は江波。漫画やアニメでは江波山と江波の皿山の間あたりに描かれている節があります。写真に見えているのは江波の皿山(江波山から撮影)。
おさらいになりますが、この辺一帯はかつては海。江波山も、江波の皿山も島だったようです。江波では戦前、海苔の養殖業が盛んでした。
ちなみに「江波」停留所の裏に見えるのは江波の皿山。
昭和19年2月、すずさんがお嫁に行く当時には、まだこの「江波」停留場はありません。
舟入本町〜横川新橋〜横川駅
当時(昭和19年2月)は、江波から4つ目の「舟入本町」が終点だったようです。
周作さんとお父さんの円太郎さんが
「すみません電停はどこですか?」
とすずさんに尋ねるシーンがありますが、その電停とは「舟入本町」でした。
すずさん一行は、この舟入本町の電停から市電に乗って、山陽本線の横川駅と向かいます。
アニメには一瞬、手前に横川橋(当時はアーチ橋)と、奥の横川新橋(↑写真)に市電が走るシーンが映ります。
舟入本町から、広島駅行きがあればそれに乗って行けば、乗り換えも少ないように思えますが、なぜ横川で乗り換えたんでしょうか。謎です。当時は広島行きがなかったのか、たまたま来たのが横川行きだったのか。誰か教えてくださいw
現在の横川駅。
ともあれ、横川駅から山陽本線に乗って、広島駅へ。
呉線
「廣島」駅から呉線に乗り換えます。
「向洋(むかいだな)」「海田市(かいたいち)」「矢野(やの)」「坂(さか)」「小屋浦(こやうら)」と呉線は呉へと向かって行く。
(現在より駅数は少ないです)
アニメ版では小屋浦あたりの車窓が映し出されていました。
アニメ版には、広島方面へ向かう船が描かれているけど、その船も史実通りに航行していた船を描いたようです。
その船の名は大阪汽船の「こがね丸」(当時は、海軍が徴用)。
その日は、呉鎮守府司令長官の野村直邦中将座乗で、大竹に向かっていたとのこと。
徹底的にリアリティを追求(し)す(ぎ)る、本当にすごいアニメです。
ちなみにちょうどこの日も、海上自衛隊の船が航行していました。
艦番号「732」→掃海隊群第101掃海隊(呉基地)所属の掃海艇「ながしま」のようです。
アニメでは、この辺りから車掌が憲兵と共に現れ
車掌「これより海側の鎧戸をお閉め願いまーす」と乗客に知らせるシーンがあります。
当時、呉は要塞地帯に指定されていたので、戦中は呉軍港に近づくと鎧戸を閉めさせて直接軍港を見ないようにしていたようです。
戦艦大和 目かくし塀
アニメ版では、呉線が走るすぐ横に塀が描かれています。
戦艦大和を見えないようにするための塀だったとも言われています。
今でもその目隠しの塀の痕跡と思われるコンクリートが、車窓からも見てとれました。場所は川原石駅あたり。
旧両城トンネル
当時の呉線と今の呉線はほぼ同じ所を通っていますが、戦後一部変更されてます。
その1つが旧両城トンネル。
明治36年に作られた旧両城トンネルも、昭和45年の呉線の電化にともない、より天井の高いトンネルが必要となり廃線になります。
両城トンネルをぬけると、呉駅はもうすぐです。
参考図書
「廣島中島本町ロケ地MAP」 発行:広島フィルム・コミッション
二つの「この世界の片隅に」マンガ、アニメーションの声と動作 細馬宏通著 青土社
「劇場アニメ公式ガイドブック この世界の片隅に」双葉社 他